あなたは、ヘーゲルの名言はどんなものがあるのか知りたい、また、その意味を理解したいと思っているのではないだろうか。
ただ、ヘーゲルの名言は少しまわりくどく、理解しづらいものも少なくはない。
そこでこの記事では、ヘーゲルの名言の中でも、理解しやすいものを中心にまとめた。さらに、名言を読み解くためのヒントになる解釈も付けた。
本文を読んでもらえれば、ヘーゲルの名言を味わうとともに、その意味も理解できるはずである。
この記事に書かれていること
この記事に書かれていることを短くまとめると、下記のようになります。
ヘーゲルの名言は厳選して15個紹介しているので、ゆっくりとお楽しみください。
・ヘーゲルとは→ドイツの哲学者。ドイツ観念論を代表する一人で、哲学の歴史の中でも重要な人物とされている。
・ヘーゲルの名言→有名なもの、わかりやすいものを中心に日本語と英語でそれぞれ紹介する。
ヘーゲルとは?
ヘーゲル (1770~1831年) はドイツの哲学者であり、ドイツ観念論を代表する一人である。
哲学史の中でも重要な人物であると同時に、その哲学は難解であることでも有名だ。その他、さらに詳しいことについては、関連記事を見てほしい。
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ヘーゲルの名言紹介
ここでは、ヘーゲルの名言を「日本語」と「英語」でそれぞれ紹介する。名言の下にある文章は、私なりの解釈である。
名言①
早起きして、新聞を読むことは、現実主義的な朝の祈りである。
Getting up early and reading the newspaper is a pragmatic morning prayer.
引用元:https://00m.in/uLOsY (ヘーゲル)
理想ではなく現実に生きる人は、同じく現実的な行動をするということだろう。
現実に対処するという意味では、神に祈るよりも、まず情報収集 (≒新聞を読む、現代ならニュースアプリなども含む) したほうが合理的であるのはいうまでもない。
名言②
この世で情熱なしに達成された偉大なことなどない。
Nothing great in this world has been accomplished without passion.
引用元:https://00m.in/LElhC (ヘーゲル)
何かに情熱を持ったとき、人間は物凄い力を発揮する。
たとえば、本当に好きなものや得意なものがある人は、その分野では圧倒的に強い。情熱のある人に、そうではない人は敵わない。
名言③
個人や国家、摂理に欠陥を見出すのは、その真の意味や価値を見ることよりも容易い。
It is easier to discover a deficiency in individuals, in states, and in providence, than to see their real import or value.
引用元:https://00m.in/bTZCF (ヘーゲル)
シンプルに解釈すれば、人間は長所よりも短所に着目しがちということだろう。
それは国家などの大きい単位ではもちろん、個人単位でも同じである。その結果、そこにある本当に大切なものを見逃しているのかもしれない。
名言④
天才を知る者は天才である。
He who knows genius is a genius.
引用元:https://00m.in/LmRbV (ヘーゲル)
天才は、天才にしかわからないということだろうか。
確かに、天才と呼ばれる人は世間に認められるまで変人扱いされることも多い。したがって、それを最初から知っているなら、その人も同じような人間かもしれない。
名言⑤
我々が歴史から学ぶことは、人間は決して歴史から学ばないということだ。
引用元:https://00m.in/olAbr (ヘーゲル)
What we learn from history is that man never learns from history.
ヘーゲルの講義を弟子がまとめて出版した、歴史哲学講義に書かれている一文である。
歴史を大きな流れで見れば、戦争など似たようなことを繰り返しているともいえる。そのような意味で、人間は歴史 (過去) から学ばないといったのだろう。
ちなみに、作家のマークトウェインも似たような意味のことをいっている。
名言⑥
理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である。
引用元:https://00m.in/agGOT (ヘーゲル)
What is rational is realistic, and what is realistic is rational.
法の哲学の中に出てくる、有名な名言 (命題) である。
まわりくどい表現だが、ヘーゲルは世界を理性的 (法則に従っている) ものと考えた。したがって、理性的なものは現実的となり、現実的なものは理性的になるのである。
名言⑦
新しい進歩には怖さあり。
With new progress comes fear.
引用元:https://00m.in/DFFSk (ヘーゲル)
今の社会でいえば、AIの進化や普及でさらに便利になる未来が予想される一方、それによって大量の失業者が出るというネガティブな論調もある。つまり、進歩と怖さは表裏一体である。
また、個人でも新しいことを始める、これまでのやり方を変えるのは勇気がいることだ。この名言では、そのような意味のことをいっているのだろう。
名言⑧
人格とは、高きものと、低きものとが一つになったものである。人格の高さとは、この矛盾を持ち耐えることである。
Character is the union of the high and the utterly low. The height of character is the ability to bear this contradiction.
引用元:https://00m.in/GiwHz (ヘーゲル)
人間にはさまざまな面がある。正の面もあれば、負の面もある。どんなに素晴らしく思える人物でも、正の面だけというのはあり得ないだろう。
そのような矛盾に耐えて、人格をより向上させようとする姿勢こそ、必要だといいたのではないだろうか。
名言⑨
世界の歴史とは、自由意識の進歩である。
引用元:https://00m.in/aVHxu (ヘーゲル)
The history of the world is the progress of free consciousness.
「自由」はヘーゲルの歴史に対する認識の中で、大きなキーワードの一つである。文字通り、世界の歴史が進めば、人間の自由も進んでいくと考えた。
これは必然であり、決して偶然に起きているわけではないというのがヘーゲルの主張である。この考え方は、ヘーゲル講義をまとめた歴史哲学講義の中で詳しく解説されている。
名言⑩
抽象を現実に定着させることは、現実を破壊することである。
引用元:https://00m.in/wWkCQ (ヘーゲル)
To make abstractions hold in reality is to destroy reality.
抽象的な物事 (頭の中にある概念) を現実に適用すれば、必然的に現実は破壊されるというふうに解釈した。
言い換えれば、現実を変える最初のステップは、抽象を頭の中に思い描くことから始まるのかもしれない。
名言⑪
自然な魂は常にメランコリーに包まれて、悩まされるようにできている。
引用元:https://00m.in/NdRYW (ヘーゲル)
The natural soul is always surrounded by melancholy and made to be troubled.
メランコリーとは、憂鬱な気分のことである。
解釈の仕方は人それぞれだろうが、どんな人でも真面目に生きていれば憂鬱になったり、悩んだりすることはあるという意味ではないだろうか。
名言⑫
限界に気づくということは、すでに限界を超えているということだ。
To be aware of limitations is already to be beyond them.
引用元:https://00m.in/ajUmx (ヘーゲル)
限界に気づくためには、まずはそこまで行って、それを越えなければいけないということだろうか。
限界を超えるからこそ、見えてくる新しい感覚があるのかもしれない。
名言⑬
哲学とは性質上、難解なものであり、群衆のために作られたものでも、群衆のために用意されたものでもない。
引用元:https://00m.in/rmzAT (ヘーゲル)
Philosophy is by its nature something esoteric, neither made for the mob nor capable of being prepared for the mob.
素直に解釈すれば、哲学は決して簡単なものではなく、難しいものだとヘーゲル自身がいっているということだろう。
精神現象学などの著書で、難解な哲学を展開してきたヘーゲルだからこそ、より一層説得力がある名言である。
名言⑭
幸福で安全だった時代は歴史のうえでは白紙になる。
Times when we were happy and safe are a blank slate in history.
引用元:https://00m.in/JSOxI (ヘーゲル)
歴史に残るできごとが起きるのは、世の中に大きな動きがあったときである。そのようなことがない、平和で過ごしやすい時間は歴史には残らないということだろう。
幸福で安全な時代に慣れてしまうとそれが永遠に続くように錯覚するが、長い目で俯瞰して見れば、それは短いのかもしれない。
名言⑮
ミネルバの梟 (ふくろう) は夕暮になってはじめて飛翔する。
The owl of Minerva takes its flight only when the shades of night are gathering.
引用元:https://00m.in/eXxun (ヘーゲル)
ミネルバはローマ神話に出てくる女神である。その女神が従えているのがフクロウであり、これは「知恵の象徴」とされている。
ここでいう知恵は哲学のことだ。つまり、哲学は現実の中にすぐ表れるものではなく、そこから少し遅れて出現するという意味である。
これは、法の哲学に書かれたもので長さも短いが、印象的な一文となっている。
ヘーゲルの著書紹介
ここでは、ヘーゲルの代表的な著書数冊を、この記事の名言と関係が深いものを中心に紹介する。
精神現象学
精神現象学は、ヘーゲルの著書の中で最も有名なものである。また、内容がとても難しいことでも知られている。
これを読破するのは容易ではない。それでも、ぜひ挑戦してみたい人は、読みやすく正確な翻訳で「決定版」といわれている、ちくま学芸文庫のものを選ぶとよいだろう。
このような難解なものをわざわざ読む人がいるのかと思うかもしれないが、Amazonではそこそこの評価数が付いているので、興味を持つ人は一定数いるようである。
法の哲学
「ミネルバの梟 (ふくろう) は夕暮になってはじめて飛翔する」という一文が実際に登場するのが、この法の哲学である。
具体的な内容は法の原理検討から、社会や国家の洞察までを行ったものだ。興味のある人は、ヘーゲル独特の言い回しを含めて、じっくり文章を味わうつもりで読むとよいだろう。
歴史哲学講義 (世界史の哲学講義)
ヘーゲルは1822~1831年の間、ベルリン大学で世界史に関する講義を行った。この講義の記録を弟子がまとめて出版したのが「歴史哲学講義」である。
また、講義内容を翻訳した本の中で、初回講義を収録した一冊として評価が高いのは、講談社学術文庫の「世界史の哲学講義」だ (タイトルの差異は、「最終回講義」or「初回講義」を基礎としているかの違い) 。
今回紹介した名言には歴史に関するものもあった。その一部は、このときの講義記録から抜粋している。
名言はじっくり時間をかけて味わおう
ヘーゲルの名言は直感的にわかるというよりは、ゆっくりと反芻することで「味」が出るタイプである。それは、ある意味で「哲学らしい」ものといえるだろう。
そんな名言をさらに味わうには、ヘーゲルの著書を読むのが王道だ。ただ、いきなりヘーゲルの書いた本を読むのに抵抗ある人もいるかもしれない。
そのような場合、ヘーゲル入門に最適なムック本をおすすめする。価格がお手頃なのはもちろん、誰でもわかるように解説されているので、最初の一冊として手に取りやすいはずだ。
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