あなたは骨相学がどのようなものか、どれくらい信憑性があるのか気なっているだろう。
現代の骨相学はどちらかといえばマニア向けのものであり、その正統な後継者もいないので、情報が少なくなった。
そこでこの記事では、骨相学の基本から具体的な診断方法、占いとの関係まで網羅してまとめた。
本文を読んでもらえれば、誰でも骨相学の全体像が見えてくるはずである。
この記事に書かれていること
この記事に書かれていることを短くまとめると、下記のようになります。
全体としては若干統一感がなくなっていますが、あなたの興味あるところだけでも読んでいただければ幸いです。
・骨相学とは?→19世紀の欧州で提唱された学説。頭の形を見れば、その人の性格や知能が分かるというもの。
・骨相学の間違いとは?→疑似科学だった。それを多くの人々は信じていた。また、差別の正当化に使われてしまった。
・診断方法と占いとの関係→額の大きさで知能を診断した。人相学は骨相学と似た性質をもち、今は占いとして人気である。
基礎知識
ここでは、骨相学の基礎知識として、その概要と関連する人物について解説する。
なお、骨相学は、「頭蓋測定学」や「頭蓋論」と呼ばれることもあるが、ほとんど同じ意味である。
骨相学の概要
骨相学とは、人間の「脳」を27個の器官の集まりと考え、その機能が頭 (頭蓋骨) の大きさや形に現れるとする、19世紀に唱えられた学説である。
たとえば、額(ひたい)が大きい人は「頭がよい」とされたので、著名人など社会的地位の高い人間の肖像画を描くときは、意図的に額を広くすることもあった。
骨相学は19世紀前半の欧州で大流行となり、最盛期には、結婚相手の選定や就職志願者の適正チェックにも使われたといわれている。
このような状況なので、頭の形を理想的なものにするための矯正ヘルメットまで売られるようになった。しかし、20世紀中盤頃から「非科学的」であるとして人々の信頼を失い、廃れていった。
骨相学とガル
骨相学を語るうえで欠かせない人物といえば、ドイツ人医師のフランツ・ヨーゼフ・ガル (1758~1828年) である。
なぜなら、骨相学という考え方を提唱したのはガルであり、それの創始者といえるからだ。ガルは、病気の人や天才など、さまざまな人々の脳を研究することで独自の「器官学」をつくりあげた。
そして、この器官学が骨相学の下地となった。ガルは頭蓋骨の形から個人の性格や知能が分かると極端な主張を展開、この考え方は一般人でも理解しやすかったため、人々の間で大流行したのだった。
骨相学の間違い
現代人から見ると、骨相学にはいくつかの間違い (負の側面) がある。
ここでは、骨相学にどのような間違いがあるのかを解説する。
非科学的である
概要のところでも少し触れたが、骨相学の考え方は非科学的 (疑似科学) であり、現代では完全に否定されている。
また、当時も骨相学に懐疑的な学者は多く、大学の学問分野としては認められなかった。
それでも、19世紀の人々の多くは医師であるガルの主張を信じて、科学的にも正しいと思い込んでいたようである。
黒人差別に使われた
黒人を始めとした、「人種差別」に骨相学が使われたことは大きな負の歴史といえるだろう。
骨相学は頭 (頭蓋骨) の形から、その人の性格や知能を判断しようとする。これが行き過ぎた結果、対象が特定の人種全体に拡大、人種差別を正当化する道具として使われたのだ。
上記はたとえば、結論ありきで自分たちに都合のよい「白人」と「黒人」それぞれの頭蓋骨を探してくる。それを使って、白人は黒人よりも優れているなどと差別の根拠にするのである。
骨相学の診断方法
これまで述べた通り、骨相学は非科学的 (疑似科学) であり、その主張は否定されている。
ただ、当時どのような診断をしていたのか興味がある人もいるだろう。ここでは、具体的な診断方法を紹介する。
具体例① (犯罪者と神父)
犯罪者には、耳の上部に共通して盛り上がりがあり、脳のこの部分が犯罪に関係していると考えられた。つまり、耳の上部に盛り上がりがあれば、犯罪者気質 (左イラスト) である。
また、神父は頭頂部が膨らんでいる人が多く、同じく脳のこの部分が信仰心に関係していると考えた。つまり、頭頂部が膨らんでいれば、宗教家気質 (右イラスト) である。
具体例② (子供好きの女性)
額が小さい女性は科学や芸術能力が低いとされた。ただ、このタイプは子供の世話が得意であり、そこで能力を発揮できると考えられていた。
具体例の①、②共に現代の感覚からみれば違和感があるが、当時は本気で信じている人も少なくはなかったのである。
骨相学と占い
疑似科学ではあるものの、19世紀に大流行した骨相学は、現代でいえば「占い」のようなものだったといってもよいだろう。
占いは現代社会でも広く受け入れられ、中には、大きな流行になるものもある。
骨相学からは若干脱線するが、個人的な思い出も振り返りながら、そんな占いをここで三つ紹介する。
人相学
「人相学」は一言でいえば、人の顔つきを見て、その気質や性格を判断するという占いである。人を見た目で判断するという意味では、頭の形を見て判断する「骨相学」と似た性質を持っているといえる。
実際、哲学者のヘーゲルは自身の著書の中で、骨相学と共に人相学を話題に出している。
また、今でも関連書籍は豊富であり、たとえば、下記のようなものは、話のネタにするような感じで軽く楽しめるだろう。
補足
「人相学」は別名、「観相学」とも呼ばれている。その原点といえる内容が、小論考集 (新版 アリストテレス全集 第12巻) という本に収められている。
これは古代ギリシアの哲学者である、アリストテレス名義 (あくまでも「名義」なので、本人の作品ではない) の著作だ。
人相学の他にも、「植物について」や「機械学」など、興味深いテーマについて書かれているので、哲学の文脈で人相学を知りたい人にはおすすめの一冊である。
血液型診断
「血液型診断」は一時期爆発的な人気になり、関連書籍もベストセラーになった。その影響力はすさまじく、最盛期は日常生活でも「○○型だから、性格は××」のような会話をする人が (多くはネタとしてだが) 一定数いた記憶がある。
また、少し調べてみると、血液型診断という考えは古くからあり、1970年代にそれを解説する書籍が出版されていたのは驚きである。
今は完全に下火だが、このような書籍は、当時を懐かしく思って購入する人もいるようだ。
動物占い
こちらも一時期大人気となり、現在でも根強い人気を誇る占いである。動物占いが流行ったときは、学校の先生がなぜか熱中していて、楽しそうにその話をしていたのを今でも覚えている。
個人的にも、今回紹介した三つの中で一番好きなのが「動物占い」である。各動物のキャラクターが何となく優しい気持ちにさせるし、家族や友人、恋人などと気軽に楽しめるのも魅力だからだ。
ちなみに、私の動物占いの結果は「ペガサス」だった。今では、占いから進化した「個性心理学」として、下記のような決定版の書籍も売られている。
その他の関連情報
最後に、これまで触れることのなかった骨相学に関する情報をまとめて紹介する。
骨相学とナチス
骨相学が人種差別に使われたことは「骨相学の間違い」の項目で述べた。骨相学の考え方はナチスにとっても都合がよかったので、これを積極的に採用した。
具体的には、アーリア人 (非ユダヤ人≒純粋なドイツ人) は世界一優秀だと宣伝、その優秀な骨格 (見た目) も定義されたのだ。
上記は科学的根拠のないものだが、当時はまだ信じられていた骨相学を用いることで、多くの国民に事実であるように洗脳したのである。
骨相学と哲学
骨相学が最初に流行った19世紀のころから、学者などの「インテリ」と呼ばれる人々の中には、懐疑的な見方も多かった。
たとえば、イギリスの哲学者であるジョン・スチュアート・ミルは、自身の著書の中で骨相学を批判している。
また、ドイツの哲学者であるヘーゲルも「精神現象学」で人相術や骨相学 (頭蓋論) を話題に出し、同じく批判的な文脈で論じている。
このように、当時の哲学者の間でも、骨相学はあまりよい印象ではなかったようである。
骨相学の本
ここまで読んだあなたは、骨相学に関する本がないのか気になっているかもしれない。結論からいうと骨相学を解説した本はあるものの、数が少ない。
このような中、ある意味で貴重な一冊が骨相学―能力人間学のアルケオロジーである。
真面目な本で資料的価値も感じる。ただ、残念ながら、入荷数が少ないようで売り切れているときも多い (記事執筆時点では、ヤフーショッピングでのみ在庫があった) 。
全体のまとめ
骨相学は非科学的な学説であり、過去には、差別を正当化するための道具として使われた「負の歴史」がある。
そのため、現在は後継者も存在せず、廃れてしまっているが、純粋に知的好奇心を満たす対象としてはいろいろ調べてみると面白いだろう。
また、疑似科学であるにもかかわらず、多くの人々が信じ、大流行した時代があったというのも興味深い事実といえる。
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