デカルトってどんな人? その哲学をわかりやすく解説

デカルトの自画像 1 哲学
出典:https://x.gd/lOKO5

デカルトは17世紀に活躍した哲学者である。ただ、その名前は広く知られているものの、具体的に何をした人か説明しようとすると、言葉に詰まってしまう人も多いだろう。

今回の記事では、そんなデカルトの全体像をすぐに理解できるように、必要な情報をコンパクトにまとめた。

本文を読めば、誰でもデカルトがどんな人か分かるようになっているので、ぜひ必要なところだけでもチェックしてもらえれば幸いである。

この記事に書かれていること

Rausi
Rausi

この記事に書かれていることを短くまとめると、下記の通りになります。

それぞれの詳細が知りたい場合、あなたの興味に応じて記事本文の各項目をご覧ください。

デカルトとは→17世紀の哲学者。「我思う、ゆえに我あり」の命題も有名。

デカルトの功績→当時絶対的だった「神」ではなく、「人間の理性」によって真理を探究。これは、現代の科学に通じる考え方。

デカルトの著書→「方法序説」、「省察」、「哲学原理」の三冊が代表作。

デカルトの基本情報

デカルトの自画像 2
出典:https://x.gd/lOKO5

ここでは、デカルトを理解するうえで必要な基本情報について、「生涯」・「何をしたのか?」・「何が凄いのか?」の各項目に分けて解説する。

なお、デカルトの基本的なプロフィールは下記のようになっている。最初に押さえておきたいのは、17世紀に活躍したフランスの哲学者ということである。

Rausi
Rausi

デカルトは親からの遺伝で生まれたときから青白い顔、空咳もありました。身体は決して強いほうではないといえるでしょう。

性格はどちらかというと従順であり、謙虚な人柄のようです。学問は数学が最も得意でした。

名前:ルネ・デカルト (René Descartes)

生誕と死没:1596~1650年 (53歳没)

国籍:フランス生まれ

職業:哲学者・数学者

学派:合理主義哲学

引用元:https://w.wiki/8FfW

生涯

1596年中部フランスで生まれたデカルトは、優秀な生徒が集まるラ・フレーシュ学院に入学。ここで教える学問はカトリック信仰の影響が強かったが、デカルト自身は数学を最も好んだ。

18歳で卒業後、ポワティエ大学に進学。その後は机の上ではなく、実際に自分の目で世の中を見たいという思いから、社会の中に飛び込みさまざまな経験を積む。その間、各地の優秀な学者たちとの交友も深めた。

1628年、「孤独」を求めてオランダに移住。ここから本格的に哲学に取り組み、1637年に「方法序説出版。1641年には「省察」を出版する。この頃、デカルトの社会的評価が高まる一方、否定的な学者からは非難を受けた。

1649年、デカルトに夢中になっていたスウェーデンのクリスティーナ女王の招きにより、ストックホルムに到着。1650年から女王のために講義を行う。しかし、同年に風邪をこじらせ肺炎になり、53歳で死去した。

何をしたのか?

デカルトがしたことをまとめると下記のようになる。

・当時、当たり前だった「神への信仰」ではなく、人間の「理性」の力で真理を探究しようとした (我思う、故に我あり) 。

・「神」の存在証明を曖昧な方法ではなく、「理性」によって論理的に厳密に行った。

・人間や世界を二つに分ける「二元論」の考えを提唱。また、世界は物理法則で成り立っているとする「機械論的世界観」の考えを示した。その他、数学では座標の概念を確立した。

何が凄いのか?

デカルトが生きた時代は、「キリスト教 (神) が絶対」であった。個人の認識や世界観がキリスト教に絡め取られるのが当たり前の世の中で、「人間の理性」によって真理を探究しようとしたデカルトの姿勢は、現代に通じるものがある。

そのため、デカルトは「近代哲学の父」と呼ばれるのである。また、理性によって物事を客観的に把握しようとする姿勢は「科学的態度」の原点ともいえる。

Rausi
Rausi

簡単にいうと、当たり前のように信じられてきた「キリスト教中心のものの見方」から、今に通じる「人間の理性を用いたものの見方」へシフトしたことが革新的だったのです。

このようなものの見方は現代でも続いており、それが科学の発展につながっています。また、個人を「神」の呪縛から解き放ったという点でも、重要な意味があります。

ただし、そんなデカルトでも「神の存在そのもの」は信じており、自身が考えた方法でその証明をしました。この事実は、当時どれだけキリスト教が絶対的なものだったかを感じさせます。

デカルトを理解するための重要用語

本を探す女性画像

ここでは、デカルトをより深く理解するために、彼と関連の深い用語をいくつか見ていこう。

なお、彼が残した「名言」は下記記事に詳しく掲載している。

→デカルトの名言集![英語訳付き]

スコラ哲学

スコラ哲学は神学をベースとした、学問スタイルの一つである。

キリスト教の価値観が絶対だった当時、神学 (スコラ哲学) は「真理は神への信仰でのみ知ることができる」と教えていたが、数学的に厳密な思考をするデカルトはこのことに疑問を持った。

その疑問が、のちのデカルトの革新的な哲学体系を生み出すことになる。なお、スコラ哲学はラ・フレーシュ学院の基盤になっていたものだが、学院そのもの対しては好意的であった。

演繹法

演繹法」はデカルトの提唱した、普遍的前提から論理的推論によって結論を得る方法である。よく知られたものに、大前提・小前提・結論で物事を説明する三段論法がある。

その他、詳しくは下記記事でも解説している。

→演繹法とは? わかりやすく解説

方法的懐疑

「方法的懐疑」とは、「確実なものに到達する 」ためにデカルトが考え出した手法だ。懐疑とは、疑いを持つことである。つまり、疑いなく確実といえる段階まで、あらゆるものを疑う態度を指す。

たとえば、人間の感覚が信用できないと考えたデカルトは、五感で感じられるあらゆる情報を徹底的に疑った。人間の感覚に頼った学問も信用できないと考えた。

このような妥協のない態度によって、「確実なもの (真理)」 に到達しようとしたのである。

我思う故に我あり

前項の「方法的懐疑」でさまざまなことを疑っていたデカルトは、ある結論に達する。

それは、あらゆるものを疑った結果、「今、疑っている (考えている) 自分だけは確実である」ということだ。

これが有名な思う、故に我あり」(コギト・エルゴ・スム) という言葉の意味である。この真理を土台にして、デカルトはさらに考察を深めていく。

明晰判明

「明晰判明」とは、デカルトが生み出した概念であり、何が真理であるかを判断する基準である。実際、デカルトの代表的な著書の中でも、この基準をもとに「何が真理なのか」を提示している。

ただ、「明晰判明」の基準は曖昧という指摘もあり、ライプニッツなどの他の学者から批判されることもあった。

デカルトによれば、明晰判明は「明晰で判明な知覚を、曖昧で錯雑な知覚から区別する方法」としている。また、その具体的なやり方も論じているとして、それ以上の補足説明はしていない。

二元論

「二元論」とは、物事を対立する二つに分ける考え方である。たとえば、「善と悪」は二元論的考え方といえる。

デカルトも二元論者であり、具体的には「心身二元論」「物心二元論」を主張した。二元論については、下記記事でも詳しく解説している。

→二元論とは? わかりやすく解説

機械論

機械論」とは、世界や人間は物理法則に支配され、機械的に動いているとする考え方である。デカルトはこのような、機械論的世界観を持っていた。

具体的には、機械論の考えを動物に当てはめる「動物機械論」が有名である。機械論について詳しくは、下記記事でも詳しく解説している。

→生気論と機械論についてわかりやすく解説!

神の存在証明

数学が得意で合理的な思考のデカルトでも、神の存在は信じていた。それほど、この時代における神は絶対的なものだったのだ。

ただ、デカルトは同時代の人々と同じように漠然と神を信じているのではなく、文字通り「神の存在を証明」しようとした。

その証明は①人間は不完全だが、完全性という概念は持っている②完全性という概念は生まれる前に、完全な存在によって植え付けられたと推論できる③完全な存在とは神であり、したがって、神は存在する。というものである。

デカルトの (代表的) 著書

古い本の画像

デカルトのいくつかの著書を出版している。その中でも、特に有名な三つの本を見ていこう。

なお、「方法序説」は出版社によっては、「方法叙説」とタイトル表記が書かれているものもあるが、扱っている内容は一緒である。

デカルトの著書① 方法序説

デカルトに興味がある人の多くが最初に手にする一冊、それが「方法序説」である。古くは岩波文庫から、最近では、講談社学術文庫などいくつかの会社から訳本が出版されている。

講談社学術文庫の本は訳が分かりやすいと好評。その他、漫画で学べるものもあるので、個人の興味に応じて選択肢が広いのが嬉しい。

内容はデカルト哲学の方法論発見や確立の経緯を書いたものである。有名な「我思う、故に我あり」もこの一冊から引用されている。

デカルトの著書② 省察

「省察」も方法序説と同様、いくつかの出版社から訳本が出ている。その中でも、ちくま学芸文庫のものが比較的好評である。岩波文庫は表現が硬い。ただ、その分、日本語訳が一番正確といわれている。

内容は方法序説と被る部分も多いが、方法的懐疑や神の存在証明も扱っている。また、本書が特徴的なのはデカルトの哲学に対して反論をもらい、それに対して再反論する形をとっていることである。

方法序説を読み終えた後、次のステップとして選ばれることが多い一冊となっている。

デカルトの著書③ 哲学原理

「哲学原理」は古くは岩波文庫、最近ではちくま学芸文庫のものが好評である。また、本書は自然哲学者で物理学者でもあるニュートンが愛読した一冊としても知られている。

哲学原理が特徴的なのは、自然科学の原点的な一冊となっているところである。つまり、デカルトの理性的な哲学を通して科学が発展した、その歴史を実感できる著書ということだ。

上記の通り、哲学書としてはもちろん、科学の観点からも学びのあるものなので、興味のある人は本書を手に取ってみるのもよいだろう。

デカルトの数学功績

デカルトは数学の分野でも功績を残している。

ここでは、あくまでも触り程度であるが、そのいくつかを紹介する。

デカルトの符号法則

デカルトの符号法則とは、下記のようなものである。より詳しく知りたい場合は、リンク先を見てみるとよいだろう。

→デカルトの符号法則

デカルトの符号法則

実数を係数とするn次方程式
  f(x)=a0xn+a1xn-1+……+an=0
の正の解の個数についての法則。実数係数の方程式の正の解の個数は、その係数a0,a1,……,anの符号の変化の数Nに等しいか、またはNより偶数個だけ少ない。ただし重複解はその重複度も入れて考えることにする。

引用元:https://x.gd/RqVei

デカルトの座標発見 (ハエ)

学校でも習う「座標」の考え方を発見したのもデカルトである。そのときのエピソードとして、デカルトが部屋の中で寝ていると「ハエ」が飛んできた。

そのうちハエが止まり、その位置を表すことができるのを発見。これが座標の考えにつながったという興味深いものがある。より深掘りした情報は下記リンク先で解説されている。

→座標の発明

全体のまとめ

人間の理性によって真理を発見しようとしたデカルトの姿勢は当時革新的であり、その影響は現代まで続いている。

そのような視点で考えると、一見すると難しいイメージのあるデカルト哲学も、親しみと面白さが感じられるのではないだろうか。

もし、より深くデカルトを知りたいのなら最も有名な著作である「方法序説」、あるいは、入門書としてわかりやすいと大好評の「デカルト入門講義」を最初に読んでみることをおすすめする。

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