帰納法 (きのうほう) は哲学の世界で生まれた言葉である。帰納法は論理的な考え方に欠かせないものであり、現代社会でも知っていて損はないものだ。
今回の記事では、この帰納法に焦点を当て、基本的な意味を具体例を挙げながら解説する。また、後半では帰納法と関係の深い、フランシス・ベーコンについても触れていこう。
帰納法とは
ここでは、帰納法の基本的概要を具体例を挙げて解説する。
基本的概要
帰納法とは、論理的思考 (推論) 方法の一つである。論理的思考は理性的に物事を判断するときに自然と行われるものであるが、その「思考回路 (考え方のパターン)」の枠組みをつくったのが帰納法ということだ。
具体的には、「いくつかの事柄を観察して矛盾なく結論を導き出す」ことを帰納法という。矛盾なく結論を導き出すためには「それぞれの共通点」に着目し、客観的にも説得力のある結論にしなければならない。
これだけだと抽象的で分かりづらいと思うので、次項では帰納法を使った具体例を見ていこう。
具体例
帰納法を使った具体例としては、下記のようなものがある。
・A村の高齢者割合は8割 (観察・共通事項1)
・B村の高齢者割合は7割 (観察・共通事項2)
・C村の高齢者割合は9割 (観察・共通事項3)
→この国の村には高齢者が多く住んでいる。 (1~3の共通点から導き出される結論)
上記は単純化した例なので分かりやすいと思うが、帰納法は複雑な物事にも使える。複雑な事例を考えるときほど、矛盾のない結論を見つけ出す力が必要になるはずだ。
また、帰納法の結論は一つではなく、考えかた次第でいろいろなものが出てくるのも面白いところである。複数の結論が出たときは、客観的に見て説得力のあるものが支持されるのが普通だろう。
つまり、適当に共通点を見つけて、取って付けたような結論を述べるだけではダメなのだ。(具体例はこれに当てはまるが、分かりやすくするために敢えて単純化したことを理解して欲しい)
帰納法とベーコンの関係について
帰納法という考え方を提唱したのは、イギリスの哲学者であるフランシス・ベーコン (1561~1626年) である。このことから、ベーコンは帰納法の生みの親といえる。
当時のベーコンは観察や実験などの個人的経験から、普遍的 (全てに共通する) 法則を導こうと考えていた。その実践方法として唱えられたのが帰納法なのだ。
また、ベーコンは帰納法を実践するときに障害となる先入観や偏見を「イドラ」と呼んで批判した。具体的なイドラの種類は下記の通りである。
・種族のイドラ
→人間特有の感覚や錯覚によって起きる偏見。例えば、暗い場所では別のものに見えるなど。
・洞窟のイドラ
→その人間特有の偏見やクセ。これまでの習慣や教育によって、このような歪んだ見方がつくられる。
・市場のイドラ
→人間同士の接触や交際によって生じる偏見のこと。「噂」など、言葉の不正確な使用がこれに含まれる。
・劇場 (権威) のイドラ
→権威ある人物や学説、伝統を盲目的に信じてしまうこと。当時でいえば、カトリックを中心としたキリスト教的な価値観がこれに当たる。
このようなイドラは現代でも見られるものである。特に「市場のイドラ」や「劇場のイドラ」は、現代人にも関係性の深いものではないだろうか。
その他の雑学 (おまけ)
最後におまけとして、帰納法にまつわる雑学をいくつか紹介しよう。
帰納法を英語でいうと?
日本語でも難しく聞こえる帰納法を英語でいうと、どのような言葉になるのだろうか。答えは「Inductive Approach」である。あるいは「inductive reasoning」ということもある。
帰納法の数学的使い方
より専門的な帰納法の数学的な使い方もある。下記のリンクに詳細が説明されていたので、興味のある人は見てみるとよいだろう。
→series 高校数学こぼれ話 第 4 話 (他のページへ飛びます)
帰納法は現代でも使われている
帰納法は過去の遺物ではなく、現代でも論理的に物事を考えるときは使われている方法である。言葉は知らなくても、自然と帰納法に基づいた思考をする人は多いだろう。
学問的に探究すると難しくなるが、論理的な思考方法の一つとして「型」を覚えておけば、日常生活や仕事でもなにかと役に立つのではないだろうか。
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